生きるための経済講座

 「珠家」には中谷武司のポストカードと並んで、もう一人のカードを売っています。息子の作ったカードで、これはインクジェット印刷のため、2枚150円で売られています。

 小学1年生の息子に私たちは小遣いを与えていません。彼の小遣いはこのカードの売上なのです。

 彼はたまにカードの売上を数えに店にやってきます。売上は小さな入れ物に入っていて、売上が1500円あれば、そのうち一割、150円を場代として店に渡します。また、この売上から原材料のカードやカードを入れるビニール袋を購入します。また、武司がカードをデザインしているので、1種類につきデザイン料として200円を渡しています。それら諸々を差し引いたものを自由に使うことが出来るのです。

 最近、友達が持っている電子迷路が欲しくなり、売上を持ってダイコクヤ(おもちゃ屋)へ行きまし
た。2980円でそれは売っていたのですが、彼の財布には2156円しか入っていません。何度も数えましたが同じです。「ママァ、千円貸してよ!」と彼は言いましたが、当然ダメです。「ジャスコならもうちょっと安いかも。」と息子が言うので、ジャスコへ行きましたが、そこは2880円。がっくりと肩を落とす息子はもうちょっと頑張ってカードを売り、稼ぐことにしました。
 しかし、カード売上はちょっと停滞気味。そこで、相談して新しい種類のカードを作ることに。暑中見舞いバージョンです。早速絵を描き、武司がカードにしました。これがまあまあヒット。ちょこっと売れかけたころのことです。

 「ママ!!これ見て!」息子が友達んちから一枚の広告を持ってきました。ユーストアのものです。「これ!ここ!!」息子の指すところを見ると、欲しがっていた迷路が載っていて、なんと1980円となっているのです。

 翌日、息子は自慢気にレジでお金を数え、無事電子迷路を手に入れることが出来ました。

 私たちは不安定な経済の中で生活しています。夫は画家、私は体を使う仕事で、どちらかが倒れたら(特に私が)大変なことになります。それで、私は息子にある程度の経済観を持ってもらわなくてはいけない!と思い、色々と経済教育をしてきました。“お金は稼いで得るもの”ということを理解させるためです。

 まずは、お金の種類を覚えることから始まり、お金の単位、お金の数え方、実際に買い物に出かけて一緒に買ってみる。そうすると、消費税についても考えなくてはいけません。また、同じ商品でも売っているところによって値段が違いますから、どうしてそんなことになるのか話し合います。テレビも大いに利用できます。欲しいお菓子のCMがいかにおいしそうに見えるのか、実際においしいのか、を検証します。また、同じような商品でもCMしているものとそうでないものがあり、ぞの値段の違いや味の違いも比べてみたりします。そういうことは普段のおやつを買いに行く場で可能です。

 前回の消費者金融のCMについても、子供は大好きで歌っていますが、それが何の会社なのかをハッキリ説明しておきます。大体、「教育上よくない」と言って自粛を求めるのもいいですが、世の中には教育上よくないものが蔓延していますから、覆い隠すより、きちんと説明したほうがいいと思うので、きっちりと利息やなんかについて説明してあげましたら、翌日保育所に行ってすばる君に「お金を借りるんやったらアコムとかアイフルじゃなくて、郵便局や銀行にしやなあかんでー。利息が高いで。」と説明していたそうで…。

 まあ、とにかく、経済教育はやっている親も結構楽しんでいます。なんでもそれに結びつけることが出来るからです。去年の年末のこと。消防自動車が走っていました。「こんな師走でも働いていて消防士さんて大変やなあ。」と私が言いました。すると息子が「じゃあ、お礼をしやなアカンなあ。」と言うので

「そうやなあ、そやけど、ちゃんとお礼してるんやで。」
「え?ほんと?」
100円のもの買うときいくら払う?
「えー105円。」
「その5円てなに?」
「そんなん消費税やんか。」
「その消費税が消防士さんのお給料になったりするのよ。」
「ひえー!ほんと?」

 そのあと、国の仕事と普通の会社の仕事の説明になり、税金の説明もして、ついでに、保育所の先生の給料にもなると言ったら、息子は相当驚いてました。
 そうは言っても、子供の忍耐力は限界がありますから、いつまでも聞いていることはできませんが。

 中学生になると、企業へ行って実際の労働を体験することがありますが、当然無給です。この講座の一番最初に書きましたが、学校の先生には当然「給料!?何言ってるんだ。中学生だぞ。」という気持ちがあるようです。確かにろくな使い方をしないかもしれません。当然です。お金の使い方を知らないのですから。お金を与える時には、使い方、お金の世界の仕組みも同時に教えなくてはいけません。中学の金銭教育では使い方と、仕組みが抜け落ちているように思えます。

 子供だって稼いでいいのです。アメリカから小学生の社長なんてのが来日した時にはマスコミは一斉に持て囃しました。何もお金のことを教えないで、高校を出たとたんに経済の渦へ放り込まれるなんて空恐ろしいことです。自分で稼いだお金を大切に使うって、とてもいい教育だと思うのですがねえ。

 

上記のポストカード 二枚で¥150

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