生きるための経済講座

 最近保険のCMの多いことと言ったら!!

 私は夜の仕事なので、昼に民放のニュースを見ることが多いのですが、やたらと保険のCMが多い。しかも、具体的な数字を出し、まるでニュースの一部のようでつい注意を引かれてしまう上手い作り方をしています。

 特に「はいれます 終身保険」(アリコ)や「これからだ」(アメリカンホームダイレクト)など。これらは50歳から80歳までの人が入れる高齢者向けの保険です。考えてみたら、最も病気に罹りやすいこれらの人々を相手に保険を販売するなんて、なんて良心的なのでしょう!

 なーんて、そんな訳あるはずがありません。私は「保険会社はなんて賢いんだろう。」と感心しました。その訳はこうです。現在日本の個人金融資産(貯蓄や株、債券など)は1400兆円あります。そのうち、75%を50歳以上の世帯が保有。65歳以上の世帯が金融資産の60%弱、約830兆円を保有しているのです。

 つまり、前出の保険会社はこうした眠っている資産を保険代に向けさせるべく、50歳以上を対象とした保険商品を開発したと言う訳。賢いですね。この「保険」というところがミソ。これは貯蓄の一種のように考えられているからお金を出しやすいのです。しかし、実際にはそんなウマイ話はありません。パンフレットをよく読むと、病気ではなく、お金をもらえるのはケガだけ。まあ、死んだときの葬式代と受け取った方が賢明でしょう。

 保険は「入る」と言いますが。実際には購入するという感覚を持って下さい。保険は「逆宝くじ」。宝くじは「1等当選を期待する」商品ですが、保険は「すごい治療費を必要とする病気になるかもしれない」ことに賭ける商品です。

 しかし、その可能性れは限りなく分からないし、毎朝読む新聞には「医者に見放されたガン患者が生還!メシマコブの威力」とか「ガンにはアガリクスが効く」などの文字が躍っています。病気はコワイです。何かあって高額治療が必要な場合だってあります。

 例えば医療保険のパンフレットに並んでいる次のような文字。


・一泊二日からの入院でもOK

(従来の保険は5日以上入院しないと 保険金が給付されなかった)


 しかし、これは次のように置き換えることもできます。

・一泊二日からの入院でもOK

→それくらいなら貯蓄でまかなえる。


医療保険の場合、30歳で入り、60歳で払い込みを終えるとします。そうすると、一生保証が続く物もあります。また、10年ごとに更新するタイプもありますが、ここでは払い込み終了タイプで考えてみます。一ヶ月1万円で30年間で払い込みが終了する場合。


1年の保険料

12万円

60歳までに払う保険料

360万円


 つまり、これは基本的に途中で解約しなければ360万円でこの「保険を買う」ということです。端的に言うと「360万分以上医療費を払わないと損」することになります。

 パンフレットによくある例として、「盲腸で5日間入院」というのがあります。すると、一日の給付金が1万円×5日で5万円。手術給付金が10万円で、合計15万円もらえる。とあります。ついでに、入院が7日以内だったので無事故ボーナス20万円も後に受け取ることが可能です。(これはアリコの「てごろでがっちり入院保険」からの引用です)盲腸なら入院費をほぼまかなえるようです。

 でも、これが十二指腸潰瘍だとしたら?京都第二赤十字病院の入院診療計画書によると、約10日入院で必要な金額は約13万円。これに差額ベッド代が5000円/日かかるとしてプラス5万円で18万円の自己負担です。
 これが保険に入っていた場合 1日に1万円給付される場合だと10万円もらうことができます。手術はしませんから手術給付金はもらえません。自己負担は8万円。7日以上の入院なので無事故ボーナスをもらうことはできません。

 例えば45歳で盲腸になったとしたら?それまでに払い込んだ保険料が180万円であるのに対し、入院してもらえたお金はたったの35万円。じゃあ、保険料でなく、毎月一万円貯蓄していたとしたら…
 治療に必要なお金は実際10万円程度のようですから、手元には170万円が残ります。
 それが十二指腸潰瘍だとしたら?保険でもらえるお金は10万円ぽっち。もし、保険に入らずに貯蓄していたら、自己負担18万円としても手元に資産162万円が残ります。

 これらはあくまでも概算であって、一つの考え方の例です。でも、保険ってそんなにまでして必要なものですか?

 保険は形のあるものではありせんから自分には何も残りません。物も残りませんから、転売することも出来ませんよね。60歳まで健康だとしたら、もの凄い損をすることになります。360万どぶに捨てるのと同じです。いいえ、どぶに捨てるなんてひどい言い方です。しかし、ではその360万円で何を買ったかというと「安心」だけなんですね。でも、その「安心」の値段は妥当なのでしょうか。

 こんな笑い話もあります。保険などを専門に教えている人が病気に罹ったら、何も保険に入っていなかった。
 
私の知り合いのお医者さんも保険はガン保険しか入っていないと言います。「ガンだけは治療費が馬鹿にならないから」とのこと。

 一家庭においての保険料は平均すると年間61万円と言います。(これには個人年金も入っています)収入で言うと約10%を保険料に支払っているというデータもあります。年間61万円というと、一ヶ月5万円です。これを30年続けると1800万円。わあ!すごい。家が建ちますね!

 今、生活を切りつめて保険料を払っている人がいたら、ちょっと考えてみて下さい。それを違う用途に使ったとしたら?貯蓄でなくても英会話の授業料に使ったら自分を高めることができるかも知れません。投資信託に回したら増えるかも知れません。(勿論減るかも知れない。これはリスクを伴いますが、やるだけの価値はあります。)若い人なら特に、そのお金を別のことに回すことによって将来より利益を得ることが可能です。つまり、死に金でなく生き金を使う事の方がより大切だと、私は考えます。

 保険会社は人々の不安を煽って保険商品を売っています。「病気になるかも知れない」「死ぬかも知れない(って、人間いつかは必ず死ぬんですが)」「事故を起こすかも知れない」「火事になるかも知れない」「地震が来るかも」でも、そんないつ来るか分からない不安に大金を払っている余裕が私たちにあるのでしょうか。
もちろん、余裕のない人ほど、将来に備えなくてはいけないのかも知れません。だから最小限の必要な保険を選択する必要があります。よくよく考えれば、今払っている半分以下にはなるはずです。アメリカンファミリーのCMで言っているでしょ。「よ〜く考えよ〜。お金は大事だよ〜」って…。

保険会社なのに、いい事言ってますよね。


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