生きるための経済講座

@  親と一緒に買い物に行く→・お金が「品物やサービスと引き換えになるもの」ということを認識する

 子供が初めてお金と接するとき、それはお母さんと買い物に行くときでしょう。 

 ごく幼いうちからベビーカーで連れられて子供は親との買い物に参加します。
 歩けるようになると、 子供は欲しいお菓子やおもちゃを掴んで持ってくるでしょう。(その時、親は初めて子供の欲しがるようなものはちゃんと子供の目線に置かれていることを発見するのですが…)そういうとき親は欲しいものを勝手に店の陳列棚から持っていってはいけないこと子供に教えます。
これが「品物を手に入れるためにはお金を払わなくてはいけない」ということを教える第一歩となります。
  子供は賢いもので、すぐに「じゃ、これ買って!」とねだるようになります。もちろんそんなことばかりしていられません。たまに見かけるような子供がスーパーの床に寝転がって泣き叫ぶ、カートを押す母親のあとをすがるといったようなやりたくなかった光景を自ら繰り広げてしまった。という経験は誰にもあることでしょう。
  特に、一度子供がねだるのをそのまま受けて買ってしまった場合、また、おばあちゃんなどが言われるままに買い与えてしまった、ということがあると、一層拍車がかかります。子供の要求は純粋ですから、欲しいものがあればやれるだけのことをします。言ってだめなら泣いてみる。泣いてもだめなら寝転がってみる。それでもだめなら大声で叫んでみる。といった具合に。子供は恥や外聞がありません。でも親は周囲に迷惑をかけてはいけない、恥ずかしい、といった理由から、それをやめさせるために欲しがるものを「今度だけよ。」と言って買い与えてしまいます。ところがこのことはかなり決定的な敗北となってしまいます。

  と、いうのも「これだけすれば要求が通る」と子供が理解するからです。そうなると、買い物だけでなく、色んなところでこの動物的な要求行動が発現するようになります。そして、その修正にはなかなか苦労を要するのです。

 では、どうすればよいのでしょうか

  まず、買い物に行く前に、子供に「今日は30円分のお菓子を買ってもいい。」と具体的な数字を提示します。もちろん、どれが30円のお菓子か子供は分かりません。しかし、親と一緒に探してその中から選べばいいのです。
  30円のお菓子でなくてコインを入れて出てくる10円のガムでもいいでしょう。色んな色のガムが透明な丸い入れ物から出てくるのは子供にとって大変楽しいことのようです。問題は「低金額のものを与えることを約束する」ということです。これだけのことで子供はかなり安心するのです。

  しかし、高いものを欲しがった時には「それは高いからダメです」とはっきり言いましょう。いくら以上はダメ、という基準をはっきり作りましょう。うちにかえればおやつがあるときは、ちゃんとそのことを理由に買わないといった態度を徹底させることです。「買い物に一緒にいけば必ずお菓子を買ってもらえる」と思わせるのはよくありません。あくまでもおやつのひとつとして与える。また、値段はいくらまで。と決めるのです。
  このことを続けていくと、最初は難航しても、次第に子供は納得するようになるでしょう。しかし、障害もあります。祖父母が色々買い与える場合です。今の時代のおじいちゃんおばあちゃんは「物がない時代に育ち、働き盛りのころにバブルを経験している人たち」です。ですから、びっくりするような金額のものを孫の言われるままに与えたりします。孫に嫌われたくないし孫の喜ぶ顔を見たいからです。これはどのお母さんも頭を抱える問題です。特に同居でこのことが頻繁に起こる場合、子供が非常に混乱します。


大事なことは「おばあちゃんは買ってくれてもママは買ってくれないものだ」と、子供に理解させることです。子供は親の買い物をよく見ています。「ほうれん草が今日は高いねえ。」「あ、これは今日安いよ。」「これは安いけど添加物が沢山入っているから買わないでおこう。」などど、子供に話し掛けながら買い物してみましょう。
そうすることで、品物とお金の関係を漠然と感じるようになり、後の学習に大いに役にたつのです。

次に、子供がお金に親しめるゲームを紹介します。

 

A  コインゲーム→・お金の種類を覚える

子供のころお金を触っていると「汚いからさわっちゃだめ。」と言われたことはありませんか。お金は本当に汚いのでしょうか。私たちの手に届くまでお金が誰の手を、どのようにして渡ってきたのかが分かればかなり面白い話です。いいことに使われたお金か、賄賂や賭博で使われたのか、有名人が触ったかもしれないし、遠くの土地から来たのかもしれません。お金は色んな人が触っているからバイ菌だらけで汚いというのでしょう。たしかに、お金を沢山触ると手が真っ黒になります。では、毎日お金を触っている銀行の人たちは汚いものを触っていてさぞいやなことだと、思いますか?そんなことないはずです。お金を触ったあとにちゃんと手を洗えばいいだけのことです。

コインゲーム

@  子供の数える力に応じて500円、100円、50円、10円枚、5円、1円を用意します。10枚を超えないほうが子供には分かりやすいでしょう。
A  最初に「これは1円玉。これが5円玉。」というように、説明します。
B  次に、「じゃあ、1円玉はどれかな?」「100円玉は?」といって探させる。
C  見つけられたら誉めてあげる。そして一緒に数を数え、積んでみる。

 子供は本物が大好きです。特に穴のあいたお金は世界でも珍しいし、子供も興味津々いです。お金を触った後、手をなかなか洗わないようなら、手のにおいを嗅がせてあげると、金臭くて洗う気になるでしょう。
  お金の金額を教えてあげてもいいですが、正確さにこだわらないでください。ここではあくまでもお金に触れる、といったことが主題です。繰り返していれば、そのうちお金を数えられるようになります。


B  買い物ごっこ(初級編)→・経験してみる


@ まず、買い物ごっこで使うお金を作ります。ボール紙や牛乳の蓋を使います。すべて硬貨をつくります。コインゲームにでてきた種類です。子供が扱いやすいように実物よりも大きく作ります。

A 家の中にあるものおもちゃ、絵本、子供用の服、など使います。子供に見えやすいように並べ、値段をつけます。こどもに分かりやすいように「10円、50円」といった数字にします。大きな数字でひとつひとつ紙に書いて売る商品に貼り付けたりします。この時、貼っても剥がせるタイプのシールを使うといいでしょう。

C 品物を入れる袋も用意します。子供に袋を持たせて買いにくるようにします。

 店の人と買いにくる人に分かれて買い物ごっこをします。また、入れ替わって、子供を店の人にしてもやってみましょう。

この買い物ごっこで大切な色んなことを学ぶことができます。以下はちょっとしたシミュレーション。

子: 「いらっしゃいませ」
親: 「こんにちは」(挨拶は大切。特に個人商店の場合はコミュニケーションの基本です。)
子:「今日はなにがよろしいですか」
親: 「今日は絵本でももらおうかな。」
子: 「絵本なら、こちらがおすすめですよ。」
親: 「え、じゃあ、ちょっと見せてください。ふーん。これは字が多いですね。絵が多いほうがいいんですよ。」
子: 「絵が多いならこちらですよ。」
親 :「ほんとだ。じゃあ、これください」
子: 「50円です。袋にいれますか」
親: 「袋はいりません。持ってきてるんです。」
子: 「お菓子はいかがですか。」
親: 「あ、うち小さい子供がいるのでお菓子もください。」
子: 「お菓子はサービスでつけておきます。」
親 :「わあ!ありがとう。」
子: 「どうもありがとうございました。」

 子供はこういう掛け合いが大好き。しかし、日常でこういう掛け合いをすることがあるでしょうか。最近の買い物では、なかなかこういった掛け合いはありません。スーパーなどでは、欲しいものをカゴにいれてレジでお金を払うだけですから、店の人と話をすることは少ないのです。
  かつては子供はお菓子を近所のお店で買っていました。今はどうでしょう。店の人と話をすることはありますか?
  いくら個人商店が少なくなってきたとはいえ、酒屋、豆腐屋、八百屋、魚屋、クリーニング店、花屋など、お店の人と話す機会はいくらかあるでしょう。子供は親をよく見ています。そして、親のやるようにやるのです。この買い物ごっこで、親と同じようなもの言い方や行動を見てきっと驚くことでしょう。そんなことも、一つの発見です。


参考文献 : 「お金は木にならない」ニール・S・ゴドフリー


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