「汚いからさわっちゃだめ!」

 お金で遊んでいて叱られたことはありませんか。あるいはそう言って子供を叱ったことは?
 お金は物理的にいろいろな人の手を渡ってきているからそのように言うのでしょうか。いいえ、本当はそうではありません。もっと複雑な思い「汚い」という言葉の裏に隠れています。

 ではどういった思いが隠れているのでしょう。私はこんな風に考えます。

 


お金に執着するのは「はしたない」ことだから。自分の子供にはそうなってもらいたくない。

お金は諸悪の根源だからあまり子供をお金に近づけたくない。お金がなくても幸せだと教えたいから。

親自身もお金について理解していないので、子供のあらゆる質問に答えられないから。

 

 現実に周りの人に、親からお金に関する教育を受けた、と言う人はいるでしょうか。おそらくいないでしょう。仮に受けた人がいても、せいぜい貯金をしなさいと教えられたり小遣い帳をつけろと言われたりする程度です。

 一方、学校では勤労の精神は教えても、お金の話はご法度です。「学校でお金に関する教育をやってますか?」そんな話を持ち出せば先生は揃って蒼い顔をします。「一体どういうことですか?」と反対に聞き返されたりします。勤労とは報酬を伴うものなのに、その報酬についてはまるっきりノータッチで教えもしません。学校ではお金の話はタブーなのです。

 中学2年になると、一部の学校では地元の企業での勤労をすることがあります。1週間とか長い期間です。「働くことの大変さや喜びを体験する。」ということのようです。そして、これは当たり前のように思われるかもしれませんが、「無報酬」です。

 1週間働いてお金をもらえなかったら、あなたならどうでしょう。

 私は嫌です。貴重な時間をそこに費やしているのですから、冗談じゃありません。ボランティアじゃないんですから。

 教育委員会によると、「授業なのに報酬なんて、なにを考えているんだ。」ということだそうです。それに学生を受け入れる企業としても、使えない人材の面倒を1週間も見るのですから、そちらもたまったものじゃありません。ましてや、報酬を支払うなんて!

 しかし、報酬が支払われない労働に誰が意欲を持つでしょう。学生はアンケートを提出するそうですが、そこには「為になった。」「労働が大変なことが分かった」などと、書いてあるそうです。受け入れ企業からのアンケートもあるようです。勤労学習がどういう効果を生み出しているか詳しく知りたいところです。

 中学生にお金を持たせるとろくなことにならない。と思うのでしょうか?カツアゲが起きたり、使い道を誤ったり、色んな悪いことが起きる可能性はあります。
 だからこそ、そういうことが起きないように、金の使い方をよく考えてみることが必要です。私たちはお金を「働いて稼ぐ」ことは覚えても、その大切なお金を大切に使うことは一つも教えてもらっていないのです。

 せっかく塾に通い、一生懸命勉強して大学に行ったのに、マルチ商法にはまり込んだり、高価な矯正下着を買ったり、ローンを組んでエステに通ったり、バイクを買ったりして月々のローンが収入以上になってしまう学生はもう珍しくもなんともありません。消費者金融利用者の50%が20代の若者という事実を知っていますか?そうした人々がカードのクレジットや消費者金融に手を出すのはいとも簡単なのです。

 今の子供たちだけではありません。私たちだってお金のことはこれっぽっちも教えてもらってないのです。学校ではもちろん、家でもお金は大切ということは漠然と教えてもらっても、肝心の使い方についてはまるで無知だったのです。このようにして、私たちは目の前にあるお金について学ぼうともしませんでした。お金を無視していたのです。みんながお金を無視してお金オンチになってしまいました。いかに日本中がお金オンチか。今の日本の政治や経済を見ても、一目瞭然だとは、思いませんか。

 お金に関する素晴らしいニュースよりも、お金が原因で起こった悲惨なニュースのほうが多いため、お金に関わりすぎると恐ろしい目に遭うのだと、みんな思っています。本当にそうでしょうか。お金は本当に汚いものなのでしょうか

 この「生きるための経済講座」では、こうしたお金に関することを中心に、消費者心理やお金教育、各種商法やお金から見た文化、芸術などを交えて連載していきます。 

 

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